硫黄島ショートクルーズ~ワンエク航海記~
硫黄島ショートクルーズに参加する方の多くが期待しているのは「水中オーロラ」だろう。
下記はワンエク年間スケジュールに記載している「水中オーロラ」の定義だ。
行けば当然見れるもの、と思われることも多いが、実は出会うことが難しい自然現象である。
台風によって、9月最初のクルーズが残念ながら中止となってしまったため、当クルーズが鹿児島ラウンドの始まりとなる。
気合十分で臨んだガイド陣だったが、風は東の予報。
オーロラを狙うには厳しい条件である。
ただ、硫黄島ショートクルーズの見所は水中オーロラだけでは決してない。
チャンスは逃さないように、しかし、固執はしないように。
広い視野で、楽しんでいただけるようにプランニングする。
初夏以来、およそ2か月ぶりの硫黄島周辺の海。
その素晴らしさを改めて感じた!
夏らしい真っ青な海。
そこに映えるキンギョハナダイの橙、サンゴの緑、イソバナの朱。
水温の高さによるサンゴの白化が心配だったが、そこまで目立たず安心した。
深いため長く滞在できない沈船は、その分、より強烈に印象に残る。
硫黄島周辺の魚影と景観を満喫した初日。
ただ、このクルーズの日程を含む数日間は潮が速かった。
潮止まりの時間は存在せず、激流のまま向きだけが変わる。島に近い内側のエリアならそれほどでもないが、外洋のポイントは翻弄される。
難しい潮回りである、という認識を持ち、翌日に備えた。
硫黄島の夜は美しかった。
翌日、ゲストを迎える前に海をチェック。
港前、オーロラが出ている…..!!
ゲストを少し急かしながら出港し、エントリーとエキジットの場所を確認する。
風向きは変わらず東風。潮も風も港に向かって押し込む向きなので、あまり良いコンディションとは言えない。
でも、まだ間に合うかもしれない!
急いで準備を整え、エントリー。
しかし、オーロラはもう港の中に引っ込んでしまっていた。
わずかに残った薄いオーロラを眺めてエキジット。
間に合わなかった。
これも自然現象、と言い聞かせながら気持ちを次のプランに切り替える。
まだ2ダイブある。
どこまでオーロラにこだわるか、いっそのこと全く違うプランにするか。
考える要素はたくさんある。
風向き、潮回り、ゲストのスキル、好み、使える時間。
ガイド二人と船長でいくつものプランを検討する。
「風向き的にはオーロラは難しそうだ。思い切って外洋のポイントに走るのもありだ。」
「いや、今のタイミングは潮を読むのが難しい。なんせ激流だから。しかもセオリー通りの流れ方をしていない。もしそこまで走って潜れるようなコンディションでなければ、替えが効かない。」
「風は午後にかけてどんどん強くなる予報だ。」
話し合った結果
【最後まで水中オーロラの可能性を探ろう。もし難しくても、硫黄島周辺で魚影の濃いポイントに行こう】
という結論になった。
2ダイブ目は切り替えてヤクロ瀬へ。
そして、迎えた最後のチャンス。
港前は出ていない。東側も出ていない。難しそうだが、北側まで走ってみようか。
ダメ元で、でも実際に目で確認するまで諦めたくなくて、船を走らせる。
遠目に青く温泉成分が流れているのが見える。
硫黄島の北側にある硫黄岳の周辺はアルミの成分が強い影響で、海に流れ出る温泉成分は青と白が混じったミルキーなオーロラになる。
今まで、このオーロラの下を潜ったことはなかった。
ここは水深もかなり浅いし、流れも速い。
集合写真だけ撮って、オーロラは諦めるか、なんて話していたが、なぜかわからない。
「ここ、潜ってみたい」
という気持ちが湧いてきた。多分、ガイド二人と船長、同じタイミングで。
潜ったことないエリアだし、船が当たりそうなくらい浅い根があるし、潮はかなり速そう、しかも、ラストダイブ。
でも、船の上からこの美しい自然現象に驚き、心動かされながら眺めているゲストの顔を見ていると、この選択にはきっと大きな意味があるのではないか、そんな風に思った。
水深、流れ、入る場所、上がる場所、流された時の対処。
操舵室で打ち合わせを済ませ、ゲストの前に向かう。
「いやぁ、ラストダイブなのにギャンブルなんて、普段こんなことしないんですけど!笑」
そして顔を上げ、ゲストの表情を見る。
まだ見ぬ光景への期待に輝かせた瞳。
自分の胸が高鳴るのを感じる。
「ラスト!よろしくお願いします!」
眼前に広がるのは神秘的な光景。
常々、私たちは
「同じオーロラは一度としてないんです。毎回一期一会なんです。」
と、お伝えをしている。
この時もまた、スペシャルな、この時だけのオーロラだった。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました\(^o^)/
2025年クルーズ資料は↓よりご請求下さい。
2024.09.17後藤 かな子