ワンエクロゴ

2025.08.01

磐座- IWAKURA  神宿る島の巨石と光

変わらぬものと変わりゆくもの

沖ノ島の周辺に飛来する海鳥たち

立ち入りが厳しく制限された神宿る島、沖ノ島。大和時代より国の安寧と航海の安全を祈った祭祀跡やその島を覆う巨石や島の原生林は、人の力が及ばない手付かずの聖域として太古から変わらず生き物たちの拠り所となっている。しかし、私はわずか7年間この海を記録してきた間にも、海の中の目まぐるしい環境の変化を感じている。数十年前はアラメやカジメなどの海藻が覆い茂っていたという沖ノ島周辺の海。私がこの海に通い始めた頃は、既にそれらの海藻の存在はほとんど見られず、かわりに色鮮やかなソフトコーラルやイソギンチャクなどが岩肌を覆っていた。特にソフトコーラルは見事で、島の西側エリアの海中ではどこもかしこも岩場はソフトコーラルで覆われ、その周りをキンギョハナダイの大群が乱舞していた。しかし、今年(2025年)の7月後半に沖ノ島を訪れた時は、目を疑うほど海の様子は変化していた。特にソフトコーラルが多かった祇園というポイントでは、昨年まで岩肌全体を覆っていたソフトコーラルが殆ど無くなり、色味の少ない景色へと一変していたのである。それはまるで別の海に迷い込んだような印象さえ受けたのだった。さらに、コーラルファームというイソギンチャクが段々畑のように群生しているポイントでは、ほとんどが白化しており、昨年まで一面に広がっていた場所は、ただの階段状の岩だけが残った状態に変貌。イソギンチャクが死んで抜け落ちた穴には殆どがウニの仲間が棲みついていたのである。ガイドの木村さん曰く、昨年は高水温によってソフトコーラルやイソギンチャクがかなり広範囲に白化していたらしく、ここまで急速に海中の景色が変わってしまったことに正直驚いている。

海の中の変化は、我々ダイバーが一番よく知っている。一般の人が上陸を禁じられた沖ノ島は、一見すると大昔から変わらぬ佇まいでこの海に存在し続けているようだが、その周辺の海中は大きく変わり続けてきているのである。

イサキやキンギョハナダイの群れ、ソフトコーラル、巨石、波、光…。毎回のようにこの海で同じような被写体を追い求めているが、昨今の目まぐるしい環境の変化は写真家としてこの海とどう向き合えば良いかを神が啓示してくれているようでもある。変わらぬものと変わりゆくもの。その狭間で私の意識も大きく変化していったのである。

イソギンチャクがびっしりと覆っていたかつてのコーラルファーム。
(2019年7月撮影)
イソギンチャクが消えた穴にはウニの仲間が棲みつく。
 
こちらのテーブルサンゴの周りにはイソギンチャクがびっしりと群生していた。
(2019年7月撮影)
ソフトコーラルにキンギョハナダイの群れ。これが祇園の印象だった。
(2019年7月撮影)
イソギンチャクが消えた現在のコーラルファーム。
(2025年7月撮影)
変わらずイサキの群れの数は多い。毎回のようにイサキの群れを追う中で、最近は動かないが変化し続ける岩肌や岩壁などへレンズを向けることが増えてきた。
今年、同じテーブルサンゴを撮影した。周りのイソギンチャクは無くなり周囲は岩肌が剥き出しになっていた。
(2025年7月撮影)
殺風景に見える今年の祇園。キンギョハナダイの生息数はかなり減っている。
(2025年7月撮影)
ステージのような岩を撮影中の父・中村征夫氏とガイドの木村さん。
(2019年7月撮影)
古代から変わらずあり続けてきたであろうこの景色よ永遠に。
( 2025年7月撮影)

磐座- IWAKURA 神宿る島の巨石と光

TAKUYA NAKAMURA

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