ワンエクロゴ

2024.08.15

2024玄界灘フォト企画完全撮り下ろしレポート

リクルーズ 写真・文 中村卓哉

巨石が重なり合ってできた洞窟には神々しい光のシャワーが降り注ぐ

玄界灘の海との出会い

私が初めて玄界灘の海を訪れたのは2018年の4月。父・中村征夫氏がメインの水中撮影を手がけたNHK BSP「ワイルドライフ」の撮影だった。補助の水中カメラマンとして関わることになった同番組ロケ。宗像大社の特別許可を得て、世界遺産・沖ノ島の海中をテーマに全6回、20日間に及ぶ長期の撮影ロケが敢行された。その頃からダイバーにも注目をされはじめた玄界灘の海。圧倒的な魚影や回遊魚など、SNSやWEB媒体、口コミなどで周知されてはいた。しかし、島の周囲はまだまだ未開拓の場所も多く、半ば手探りでロケは進行していった。

周囲の海域で発見された宝物は実に8万点。その全てが国宝という沖ノ島。そのような場所へ潜水できることに感謝しながら、島の周囲の未開拓の場所を隈なく潜り倒すこと約60ダイブ。祭事が行われていたと思わせるようなステージにも似た岩礁や、階段状の回廊、10メートルを超える巨石など、生物以外の光景にも次々とフォーカスが当てられていった。それは、いにしえを偲びながら万物に宿る神の存在を追求し、現代の4K映像へと変換するという、番組のテーマを超越した撮影であった。そして、その時の撮影の合間に、神が降り立つような光の降り注ぐ洞窟が発見された。それが、冒頭の写真を撮影したロックスというポイントである。

この時の撮影以来、数百本と玄界灘の海を潜っているが、今でも襟を正すような気持ちでこの海へ潜っている。そうした心構えで海と対峙した時にだけ、写真の片隅に自然を超越した大きな存在が映し出されるのだと、実はちょっとだけ信じている。

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