2025.08.01
磐座- IWAKURA 神宿る島の巨石と光
海の正倉院に眠る古代祭祀の遺物
その昔、世界遺産・宗像沖ノ島は交易の要所である朝鮮半島への航海上の座標とされ、4世紀後半から9世紀末までの約500年間にわたり、航海の安全祈願が行われていた。祭祀がおこなわれていたとされる遺構から出土した奉納品は約10万点。そのうち約8万点が国宝となっている。沖ノ島が海の正倉院とも称される理由である。それらの奉納品の殆どが、巨石の上や岩陰などから見つかっていることから、当時の人々が祭祀の場として巨石を崇め、信仰の対象としてきたことがうかがえる。
玄界灘の孤島は氷河期以降の海面上昇によって陸地の一部が島として残った場所である。さらに沖ノ島には度重なる地殻変動と玄界灘の波風にさらされて崩れた急綾な崖がいくつも存在する。そのため、海中に転がる巨石の中にも、もしかしたら祭祀が行われていた磐座が存在するのではないか。そして、巨石の陰から、海底に眠り続けていた遺物の数々が突然姿をあらわすのではないか。撮影中はそんな淡い期待を胸に、島の歴史を頭に描きながら、現実と過去との間を漂うような感覚でファインダー越しの世界を眺めていたのである。