2025.08.15
玄界灘・沖ノ島に棲みついたミナミハンドウイルカの家族との交流物語
2025年7月30日、忘れず会いにきてくれたイルカたち
よく姿を見せる海域には、見当たらなかった。白波も立っていて、探すのも難しそうだった。
もう1箇所、船は沖ノ島の天然の鳥居の役割を持つ、岩礁エリアに移動した。しかし、見当たらない。木村さんも諦めかけたその時、ゲストの1人が岩礁の方を指さしているのが見えた。イルカたちの背ビレだ!
船長は、僕とワンエク海洋哺乳類担当のかな子ちゃんが待機していた船尾を、静かにイルカたちに寄せてくれた。ダイブデッキに腰掛けて、静かに入水した。船のスクリューが出す泡で、視界が見えない。船からの指示と、顔を上げて背ビレを確認しながら、かな子ちゃんと一緒に、泡が邪魔じゃなくなる距離まで静かに泳ぎ、イルカたちの向かってくる方向を向いてじっと、その場で待っていた。
青い海の向こうに、イルカたちの姿が横一列に見えた瞬間、僕は静かに、真下に向かって潜行していた。
ブルーとサンを先頭に、5頭のイルカたちが、僕の周りを回ってくれた。なんか、前より距離近くない?シエルは、『何このおじさん?』みたいに、ちょっと遠慮気味だったかな?
後で写真整理していて気がついたんだけど、最初はお母さんのワンダーより前を泳いでいたシエル、僕に気づいてから、徐々にお母さんの後ろに後退していく姿が写されていて、笑えた。
出会いは、ほんの一瞬ではあったけど、海中から真っ直ぐに僕の方へ向かって泳いで来たイルカのファミリーに、久しぶりに感動を覚えた。その感動は最近ハマっているシャチの群れに遭遇するよりも、はるかに大きかったかもしれない。まあ、シャチのファミリーに、あんな勢いで真っ直ぐ向かって来られたら、正直、「おい、ちょ、待てよ!ヤバい!ヤバい!ヤバい!」って別の意味で緊張してたと思うけど。
これから、このイルカのファミリーがどんな風に成長して、群れを大きくしていくのか、あるいは、また新天地を求めて旅立つのか、それは定かでは無い。しかし、こんな小さな一家族から、群れに成長していく過程を側で観察できる機会なんて、そうそうある事では無いと思う。
それに水族館でもないのに、母親は分かっても、父親が誰だか分かるっていうのは、DNA鑑定でもしない限り確認できないのが普通だ。それがサンもシエルもブルーお父さんの子どもってほぼ100%確実視できるのもなかなか珍しいし、人間の家族の単位として見れるから親近感も倍増する。問題は、シーがブルーとワンダーの娘なのか、ワンダーの姉妹なのか、全く血縁関係は無いのか…。
そして写真にも挙げた、シエルの尾ビレに絡まっている釣り糸も気になるところだ。釣り人の多い沖ノ島だから、こういう事もあり得るだろう。過去に、御蔵島やバハマでも、釣り糸が絡まったイルカを目撃したことがあるが、自然に取れる場合も多い。できれば、次に会う時には、取れていることを願っている。
色々な期待や疑問、心配事は盛り沢山だ。
だからまた来年も、できれば再来年も、このイルカのファミリーには会いに来たいと思っている。