2024.07.15
「止まって待つ」はダイビングの名言だ。
re;cruise 写真・文 古見きゅう
久しぶりのトカラ列島。前回トカラクルーズに行ったのが4年前。まだワンダーシーエクスプローラー(以降ワンエク)が就航する前の話だ。しかも、未曾有のコロナ禍の始まり、ということもあり、離島には厳重な入島制限が設けられ、僕たちのようなビジターは島の民宿に泊まるどころか、港に上陸することもできなくなってしまった。出発の数日前にそんな話となり、こりゃ参ったという話だが、木村さんとゲストと相談のうえ、まだ星が夜空に輝く枕崎を出航し、トカラの一大ポイント「芽瀬」に潜り、また枕崎に戻ってくる。という弾丸日帰りトカラトリップを決行したのも、今となっては良い思い出だ。あれはあれで楽しむことができたが、もうお腹いっぱい。正規のルートで楽しませてください。
そんなほろ苦くも楽しい経験もあり、トカラ列島のクルーズには、どこか特別な心持ちになる。そして実際に面白い思い出も沢山ある。梅雨時期真っ只中で土砂降りの枕崎を出港して南下していくと、それまで分厚く鉛色だった雲が一瞬で消え去り、冗談のような梅雨明けを船上で迎えたこともある。あれは凄かった。
すなわち、ひとことで言えばドラマチックな海なんだな。場所が場所なだけに時化ることも少なくない。その分トカラに潜ることができた時の喜びは膨らむし、そこはかとなく流れる、達成感のようなものを参加者全員で共有する。行けるか行けないかは全て海次第。イライラしても仕方がない。起こること全てを受け入れる。トカラのトリップは、精神的な修行の側面もあるような気がしてならない。そう言えば、会うたびに木村さんが、菩薩のような雰囲気を醸し出してきたような気もする。達観だ。
いつまで経っても話が進まないので、そろそろ今回の本編に移ろう。
出発前夜、いつもの集合場所、枕崎のゲストハウスマックで、今回もお世話になるワンエクの木村さんと、かなこさんと合流する。これまでに何度もお世話になってはいるが、いつ会っても心地よい。簡単なマックの使い方などのオリエンテーションを済ませ、この日は夜も遅いので就寝しよう。
翌朝、ベッドを出て1階に降りると、昨日の曇天が嘘のように晴れ渡っていた。風も微風。最高の出航日和だ。ワンエクでの部屋割り、簡単な使い方をブリーフィングで聞いた後。今回の予定航路が発表され、いよいよ出航の時となった。



