ワンエクロゴ

2024.07.15

「止まって待つ」はダイビングの名言だ。

■Day.3rd

DIVE①口之島タイガーひろみ

トンボ

2日目の晩は口之島の民宿に滞在していた我々ワンエクの一味。地元で獲れた魚を存分に頂いた上に、昼間釣り上げたカイワリやアカハタなども刺身で頂く。これがまた美味かった。

翌朝は予報通り未明から激しい雷雨。朝になったら台風のような爆風が吹き荒れていた。仕方なくワンエクは出航を見合わせ、昼食を食べるまで民宿に待機することとなった。時間を持て余してしまったので、海岸沿いの道をテクテクと歩き爆風を堪能する。飛んでくる砂つぶがチリチリと痛いが、少し早いセミがワシャワシャと鳴き、お初にお目にかかるトンボも見かける。あぁ、じっくり昆虫観察もしてみたい…。

宿に戻ると木村さんから「せっかくなので野生牛(やせいぎゅう)を見に行きましょう!」との提案をされる。

「や、野生牛…。」

この口之島には品種改良の影響を受けていない、古来からの純潔の黒毛和牛が野生化した牛が山の中に存在しているのだという。それはそれは、また興味深い。希望者を募り、箱バンに乗り込み一路野生牛を探す旅へ出た。

トカラ列島の北端に位置する口之島は、鹿児島市内と比べると高温多湿で、自生している植物も熱帯のそれに近い。島の大半が鬱蒼としたジャングルに覆われ、この日は天気も良くなかったので雲も低く、視界も悪い。舗装道路も、ほぼ自然に還っているかのようにボコボコで、映画ジュラシックパークの世界に足を踏み入れたような感覚。本当にラプトルでも出てきそうな雰囲気だった。

気ままに暮らす野生牛が生息するエリアには鉄柵が施され、人々との生活圏との境界ができている。どこまで効力があるのか微妙なところではあるが、飼育される牛との交配を防ぐための施策のようだ。

野生牛エリアはこれまでの舗装道路に輪をかけて、ワインディングな状態。草木はボウボウに道へと飛び出し、野生牛の糞もそこここに落ちている。うんうん。雰囲気はあるぞ。

「いた!」ドライバーのかなこさんが、小さく叫ぶ。目の前にいるのは美しい栗毛をした野生牛。おぉ!確かに純朴な顔をしている(ような気がする)。驚かさないように、車のドアの開閉も音を立てずに外に出る。じーっとこちらを凝視する野生牛に、いきなり近づくと逃げられそうなので、見られる時は立ち止まり、ふと目線を外した時にササッっと1、2歩近づく。だるまさんが転んだ戦法。ここでも「止まって待つ」の教えが役に立ち、ひとり地味に感動していた。

野生牛も特別に僕らを警戒することなく、のそのそと山道に入り、モリモリと草を食んでいた。確かに考えてみれば、牛がこんな感じで野生の草木を食べているところってあまり見かけない。海が荒れなければ見ることができなかった野生牛。潜れはしなかったけど、これはこれで、良き機会ができたと感謝したい。

午後からは少し風も落ち着いてきたのでワンエクも出港し、今日は1本。口之島のポイント タイガーひろみへ向かった。しかしトンデモないポイント名だ。

タイガーひろみはこの周辺では珍しく、白い砂が一面に広がる。木村さんから「こういう景観は、この辺では珍しいんですよ」と聞いていたが、確かに違和感を覚えるほど広い砂地が広がっていた。潮通しが良いせいか、点在する岩の周辺には枯山水さながらの、美しい砂紋が広がっていた。しかしうっかり「日本庭園」とか「枯山水」という見た目を反映したポイント名を付けるのではなく、あえての「タイガーひろみ」という命名に拍手を送りたい。

しかし、このポイント侮るなかれ、これまで国内ではあまり見たことがないほどのシンジュアナゴの大きなコロニーが広がっていた。水深も深い訳ではない。これはこれで貴重なのではないだろうか。潜る前に「シンジュアナゴがいます」とは聞いていたものの、この時はマクロレンズを持って潜っていなかった。次回はもっと色々と整えて潜ってみたいと思わせてくれるポイントだった。

そしてワンエクは最終目的地の硫黄島を目指した。

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