2026.04.25
『魚の道』を探るダイビングスタイル
常識を捨てた3つのスタイル
いまでは遭遇率もかなり上がってきたというが、始めた当初はほとんど外していたそうだ。
最初は、ナブラが立った場所へ船を走らせ、器材を背負ってエントリーするというやり方だった。しかし、これでは準備している間にナブラが沈んでしまう。船を寄せただけで散ってしまうこともある。
「狙っている群れに当たることは、ほとんど無かったと思います」
木村さんはそう振り返る。
そこから彼らは、アプローチそのものを見直した。
❶根への執着を捨てる
最初の転換は、目指す根の周囲が激流だったとき、「根にたどり着くこと」自体を目的にしないことだった。
激流の根に無理に張り付いても、魚を見ることすら難しい。ならば、その根の周囲に集まる魚群や大物との遭遇だけを狙えばいい。
「潮が速いときは、その根のかなり潮上から魚探に反応が出ることが多いんです。だから潮上からエントリーして、魚群や大物に遭遇しさえすればいい。根の横を通過すればいいんです」
根をピシッと当てるのがトラディショナルスタイルだとすれば、これは明らかに新しい発想だ。あるいは、ワンエクスタイルと呼ぶべきなのかもしれない。
「もし潮が緩ければ、根を狙うのもありです。それに、激流だからと他のボートが諦める状況でも、僕らは潜ることを諦めなくていいわけです」
このスタイルを取り入れてから、ブルーウォーターでの遭遇率は格段に上がったという。
重要なのは、流れの速さと角度を正確に読むことだ。
❷コースの固定観念を捨てる
二つ目は、群れや大物を楽しみながら、最後に地形で魅せるようなポイントが、逆潮でたどり着けないときの発想転換だ。
「逆潮だから、じゃあやめる? でも魚探にはすごい反応がある。もったいないと思うわけです」
ならば、そのポイントに着かなければ意味がない、という前提を捨てる。
魚がいる中層そのものをポイントに変えてしまう。そうして魚だけを狙うブルーウォーターを選択するようになった。
ポイント間の距離が遠く、海況の影響を受けやすいトカラでは、限られたチャンスを確実に生かすための合理的な選択でもある。
❸経験則という地図を広げる
三つ目は、中之島、口永良部島、黒島、屋久島周辺など、各ポイントの外洋側を流すスタイルだ。
不思議なことに、そうした海域には魚が溜まりやすく、魚探の反応が良い場所が少なくない。
「リサーチを重ねることで、根とは関係なく、魚がよく集まる場所のデータは増えてきています」
特定の根に頼るのではなく、魚探と経験を積み重ね、何もない海原の中に“魚の道”を見出していく。
この3つのパラダイムシフトが、トカラのブルーウォーターの遭遇率を劇的に変えた。
その裏では、魚群や大物の反応を見抜くターボ船長の判断も、大きな役割を果たしている。





