ワンエクロゴ

2026.07.01

鬼界 KIKAI

破壊と再生を繰り返す巨大な生命体

痩せるフェーズと太るフェーズを繰り返しながら成長し続ける硫黄岳。

その後、パンデミックが終わり、硫黄島への上陸も可能となり、改めて俯瞰で島の周辺の自然を見つめ直すようにしました。さらに2025年3月に硫黄島在住の自然ガイド・大岩根尚さんにご案内いただき、特別な許可を得て硫黄岳の登山を敢行しました。手で触れる距離で噴出するガスや地熱、火山の息遣いを体感することで、作品展のイメージがぼんやりと見えてきたのです。トカラ水中映像祭で上映した「BREATH OF THE EARTH」は、その時に感じた自然観が消えないように撮影から戻った翌日にすぐに映像を編集してその日のうちに完成させた映像作品です。そちらは、写真展会場でも4Kの大画面での上映を予定しています。

硫黄鉱山周辺にある石垣は、山頂付近の岩を利用することで風化することなく美しく残っている。

硫黄岳のテクスチャーをじっくり眺めると様々なことが見えてきます。噴出する硫黄ガスの周囲には、V時の谷ができています。硫黄ガスや雨風に晒されて周囲の山肌を脆くし、徐々に崩れ落ちることで、内側にある柱状節理の岩壁が剥き出しになっていきます。さらにV時の谷のギリギリまで、人為的に石垣が組まれています。それはかつての硫黄鉱山の名残です。そこでも自然の力と採掘によって山が痩せ細るフェーズを見ることができます。そして、岩肌が崩れた斜面の下には巨大な岩が積み重なり山体の一部として取り込まれていきます。そこは山が太るフェーズと言えるでしょう。このように巨大噴火の数千年後も、自然は破壊と再生を繰り返しながら常に形を変えています。これは、海の中も同じことが言えます。鬼界カルデラを巨大な一つの生命体としてとらえてみると、流れ出ては消えていく水中オーロラもこの火山島の息遣いのように感じませんか?そこで少しだけ呼吸を止めて耳を澄ませてみると、海底から噴出するシューという音が聞こえてきます。さらに手のひらをかざしてみると、湯の花が漂っていることに気づきます。勿論、美しい水中オーロラの写真を撮ることを目的の一つとして良いとは思います。しかし、たとえそれが理想のイメージと異なった色合いだとしても、全てを受け入れることで新たな視点が生まれてくると思います。

長年硫黄ガスに晒されたのか、不思議な紋様が描かれた岩肌。
溶岩が流れ出た痕跡。隙間から炭化した木が見える。
アルミニウムと鉄分の層が混じり合う海。
針状の硫黄の結晶。
波で砕けた海水が温泉と混じり合う。
温泉と海水によって変色した岩肌。
海底から噴出する熱泉。
海中に舞う湯の花。

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