2026.09.15
来訪神と航海民 〜それらはどこから流れ着いたのか〜
発見-ラクダNaked
ボゼの祭りが行われるのは悪石島だが、途中の島々で風裏のポイントを探しダイビングしながらの航海となる。そして夕方4時過ぎに行われるボゼの祭りに合わせて悪石島に入港する予定だ。そして祭りの後は、宿がある口之島まで戻るのだが、暗くなると波が確認できなくなるため、日が暮れる前に辿り着かなければならない。このような悪天候のツアーは過去に何度も経験のあるガイドの木村さんも、ボゼの見学は今回が初めてである。通常のダイビングのツアーではこのような時化の中に悪石島までは行くことはないという。しかも、トカラの島々はどこも面積が小さく、風が回り込みやすいためポイント選びに難航しているようだった。そんな中、今回最初に潜ったのはトカラで最も大きな有人島である中之島のラクダというポイントである。ここは木村さんが初めてトカラを潜り始めた20年以上前から頻繁に訪れている場所である。ブルーウォーターを流して大物生物との遭遇率を上げるようなドリフトダイビングが主流のトカラにおいて、このラクダは美しいサンゴやイソバナの群生をゆったりと巡るような癒し系のポイントである。





私もトカラクルーズでは過去に何度もラクダへ潜っているため、おおよそのイメージは頭にあった。しかし、驚くことにエントリーするといつもとは違う世界が目の前に現れたのである。沖合の水深30m~40m付近に点在する根に向かうと、まるでパプアニューギニアを思わせるような手付かずの景色が広がっていた。シーウィープスと呼ばれるピンク色のヤギや色とりどりのソフトコーラル、巨大なミズガメカイメンや5m以上のシーファンなど、どれも目を疑うような光景であった。水深が深くじっくりと撮影はできなかったが、その景色は鮮烈な印象として記憶に刻まれた。浮上後、水面で木村さんに「ここはパプアニューギニアですか!?」と言ってしまったほどである。20年以上浅瀬を潮上からゆっくりと流すようなコースしか辿っていなかったという。しかし、今回はセオリーに反して沖合から鋭角に流したら、新発見の根にたどり着いたのである。
早速、水面休息中にそのポイントを「ラクダ Naked」と命名した木村さん。その名の由来を聞くと、ロック好きの木村さんらしいエピソードが出てきた。ビートルズが昔「レット・イット・ビー」のアルバムを制作した際、プロデューサーのフィルスペクターのアレンジが気に入らなかったポールマッカートニー。その後30年以上経って自分好みにアレンジを変えてセッションした音源をまとめたアルバムが「レット・イット・ビー Naked」だとという。20年以上通い詰めたラクダだが、Naked(ありのまま)の素直なアプローチで新たに発見したポイントに相応しい名前である。さすがネーミングのセンスも素晴らしいと感心した。







