2026.09.15
来訪神と航海民 〜それらはどこから流れ着いたのか〜
生と死
今回のトカラ取材では、良くも悪くも数年前に訪れた海中の景色と一変した場所がいくつもあった。口之島の「港のヨーコ」というポイントには私が好きなリーフがあり、2024年に撮影した写真が最新のフォトブックに掲載されている。しかし、数年前の白化現象によりサンゴは広範囲に死滅し、まるでサンゴの墓場のような光景に様変わりしていた。しかし、死んだサンゴの隙間から小さなサンゴもちらほらと芽生えており、未来へ命のバトンが繋がる様子も確認できた。
生と死は隣り合わせであり、生があるから死も存在する。それは、悪石島で見たボゼの価値観にも共通する。冥界から突如現れるボゼはお盆の死臭に満ちた世界を潔めた後、森の中で人々に踏み荒らされて大地の肥やしとなり再び冥界へと旅立っていく。自らの死によって新たな命を育み、さらに未来へと生命のバトンを繋いでいくのである。それは自然界の普遍性にも共通する。サンゴが死んだガレ場や砂地は生き物たちの産卵場となるばかりか、サンゴの子孫が着底するための土台となっていく。人口わずか80人あまりの秘境の島でひっそりと守られてきた伝統と、トカラの海中で誰の目にも触れず繰り返されてきた命の連鎖の物語が頭の中で結びついていった。そしてさらに、7300年前のアカホヤ噴火から続く人類の壮大な航海の歴史が、ファインダー越しにとらえた景色の中で確かに生き続けていることを実感できたのだった。
鬼界から異界へ。図南鵬翼の終わりなき旅はまだまだ続いていくのである。





